『猟人日記』から

やっと、『猟人日記』(ツルゲーネフ 工藤精一郎訳 新潮文庫)を読んだ。25の中短編が集められている。ことに『チェルトプハーノフの最後』がズシンと来た。友は亡くなり、若い妻に去られた身の男。そこへ一頭の馬が自らのものとなる。半年後、馬は盗まれる。男は馬を取り返しに出かける。一年後、馬を見つけ、戻ってくる。しかし、この馬が、かつて愛した…

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戯れ言Ⅱ

劇団どくんごの演出者どいのは、語る。「観客は、ストーリーと全く違うところを楽しんでいるということに気づいたのです」。(『KANGEKI』)そう、客は、少なくとも俺はストーリーを見てはいない。演者の立ち姿を楽しんでいる。舞台で見せる虚ろな眼差しやとまどいにひきつる頬、うっすらとした笑みの口元、冷えびえとした物腰、消え入りそうな声音にに…

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戯れ言

植込みに散水する。植込みの状態を見る。植込みと会話するように。植込みが話すわけではないが、私の中で会話は成立する。街中の建物を見上げる。その建物に対し、私の方から投げかけるものがある。建物はそこに立っているだけではあるが、私がそれに目を遣る度に建物の方から返ってくるものを受け止める。私の中に世界はある。   皆…

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